過去掲載したコラム

【NO11:親族内での事業承継において、法人と個人のそれぞれに係る主な税金とは?

法人に係る税金

  1. 法人税
    • 事業承継に伴う株式や資産の譲渡が発生する場合、譲渡益に対して法人税が課税されます。会社が株式や資産を売却した際、その売却益が法人所得となり、通常の法人税率が適用されます。
  2. 消費税
    • 事業承継に関連する取引が商品やサービスの提供とみなされる場合には、消費税が課せられることがあります。特に、資産の売買やサービス提供を伴う取引には消費税が適用される可能性があります。
  3. 登録免許税
    • 会社の役員変更や本店移転など、事業承継に伴って会社の登記情報を変更する場合、登録免許税がかかります。
  4. 不動産取得税
    • 事業承継に伴って法人名義の不動産を引き継ぐ場合、地方税である不動産取得税が課税されます。(経営力向上計画を策定し大臣の認定後、2026331日まで不動産取得の申告書に添付した場合は減税対象 土地住宅3%→2.5% 住宅以外の家屋4%→3.3%

個人に係る税

  1. 相続税
    • 事業承継が親族の相続として行われる場合、相続税がかかることがあります。特に、事業に関連する株式や不動産などの財産が相続の対象となる場合、これに対する相続税が発生します。
    • ただし、事業承継税制によって一定の要件を満たすことで相続税の納税猶予や免除が適用されることもあります。
  2. 贈与税
    • 親族に対して株式や事業資産を無償または低価で譲渡した場合、贈与税が発生します。贈与税は通常の贈与に対して課税されるものですが、事業承継税制によって、一定の条件下では贈与税の猶予制度を活用できる場合があります。
  3. 所得税・住民税
    • 株式や資産の譲渡があった場合、その譲渡益に対して所得税と住民税が課されます。個人間での資産の移転による譲渡益は、所得税の対象となり、さらに地方税である住民税も課されます。
  4. 不動産取得税
    • 個人が不動産を引き継ぐ場合、不動産取得税が課税されます。これも地方税で、相続や贈与に伴う不動産の取得に対してかかります。

事業承継税制について

親族内事業承継における大きな負担となる相続税や贈与税については、事業承継税制を活用することで一定の要件を満たせば、納税猶予や免除が認められることがあります。中小企業が円滑に次世代へ引き継がれることを目的とした制度で、主に以下の税制優遇があります。

  • 相続税・贈与税の納税猶予
  • 株式の全株または一部についての納税免除

この制度を活用するには、事前に申請手続きや事業計画書の提出などが必要となります。

事業承継を計画する際は、これらの税金の影響を把握し、顧問税理士等、専門家のサポートを受ける必要があるでしょう。

 

【NO10:中小企業の後継者に向いてる人、向かない人】

中小企業の後継者に「向いている」人の特徴

1.リーダーシップと決断力

後継者として成功するためには、強いリーダーシップと決断力が要りません。リーダーシップとは、組織を牽引し、目標に向かって全体を動かす力です。良い後継者は、ビジョンを持ち、従業員を鼓舞し、方向性を示すことができる人物です。決断力も重要で、難しい状況に諦めた際にかつ正確なを下し、実行できる判断能力が求められます。

2.柔軟性と適応力

ビジネス環境は常に変化しており、成功するためには柔軟性と適応力が必要です。市場の変化、技術の進歩、顧客のニーズの変化に迅速に対応できる能力は、経営者としての大きな強み新しいアイデアや方法を積極的に取り入れ、変化に適応する姿勢が求められます。

3.コミュニケーションスキル

後継者としては、コミュニケーションスキルが非常に重要です。良好なコミュニケーションは、従業員との関係構築、顧客と洞察の関係の形成、取引先との連携に要注意です。明確で効果的なコミュニケーションは、問題の早期発見と解決、チームのモチベーション向上にもつながります。

4.戦略的思考と計画性

後継者は、短期的な課題に対処するだけでなく、長期的な視点を持って経営戦略を考える必要があります。戦略的思考を持ち、具体的なビジョンや目標を設定し、それなりに向けた計画また、計画を実行に移し、結果を分析して必要な修正を続けるスキルも重要です。

5.注意知識と経営スキル

中小企業の経営者は、情勢を把握し、健全な管理を行う能力が必要です。知識を持ち、予算の管理、資金調達、利益率の改善に取り組むスキルが求められます。経営に関する幅広い知識と経験があると、より効果的に会社を運営できます。

6.情熱と忍耐力

後継者として成功するには、事業に対する情熱と忍耐力が要ります。困難な状況に諦めた際にも諦めず、目標に向かって努力を続けることができる人材が求められます。源となり、忍耐力は長期的な成功に繋がります。

7.対人関係のスキル

良好な対人関係のスキルは、チームの協力を得るために必要です。信頼関係を見据え、従業員や取引先との関係を維持する能力が求められます。また、問題解決においても対人関係のスキルが役に立ちます。


中小企業の後継者に「向いていない」人の特徴

1.決断力が欠如している

決断力がない、または決断を先決にする傾向がある人は、後継者としての役割のが難しいだろう。 ビジネスには迅速かつ効果的な決断が必要であり、これができないと企業の成長に悪影響を考慮する可能性があります。

2.変化に対する抵抗がある

ビジネス環境は常に変化しており、新たな挑戦や変化を受け入れ、適応する能力が求められます。

3.コミュニケーションが苦手

コミュニケーションが苦手で、情報の共有や対話が不足している人は、チームの士気を低下させたり、不快や摩擦を感じる可能性があります。経営者として、効果的なコミュニケーションスキルが欠けていると、会社全体に悪影響が考えられます。

4.計画性がない

短期的な視点でしか物事を考えられない、または計画を立てずに行動する人は、経営者としては難しいでしょう。 ビジネスには長期的な計画が必要であり、それを持たずにただ日々の業務を遂行するだけでは、企業の成長や業績の維持を実現する可能性があります。

5.財務管理に無関心

重要知識が不足している、または注意に無関心な人は、会社の経営を正しく行うのが難しいです。資金の管理や経営資源の最適化ができないと、企業の安定性や成長が注目れる可能性はあります。

6.忍耐力が不足している

困難な状況で簡単に諦めてしまう、またはストレスに対処できない人は、後継者としての役割を果たすのが難しいです。 ビジネスの世界では、困難な局面や失敗に対して耐え強く取り組む姿勢が求められるます。

7.対人関係に問題がある

対人関係がうまくいっている、チーム内での摩擦が多い場合、経営者としての役割を果たすのは難しいです。に多大な不安があります。


以上が、中小企業の後継者として「向いている」人「向いていない」人の特徴ですが、これで「向いている」人だったから経営者になれるとは限りません。なぜなら人は自分に甘いものです。あなたのまわりの、第三者数人に聞いてみるのが一番正確な判断が出来るかもしれません。また今はできてなくても、将来できるようになった経営者を私は何人も見ています。何事もあきらめず頑張る気持ちが大事だと私は考えます。

 

【NO9:Ⅿ&Aで買収する前に検討しておく必要があるPMIとは?】

M&A後にシナジー効果がなかなか現れない企業にとって、PMIPost-Merger Integration、統合プロセス)を適切に進めることが重要です。シナジー効果を発揮させるために、以下のような戦略とアプローチを検討すると良いでしょう。

1. 明確な統合計画を策定する

企業統合には明確なビジョンと計画が必要です。M&Aの目的が曖昧であったり、具体的な統合プロセスが不十分である場合、シナジー効果が現れにくくなります。

  • シナジーの明確化:コスト削減、技術の共有、顧客基盤の拡大など、どの分野でシナジーを生むのかを具体的に設定。
  • 短期・中期・長期目標の設定:シナジーを発揮させるためのマイルストーンを決め、進捗を管理。

2. コミュニケーションと文化の統合

企業文化や働き方の違いはシナジー発揮を阻害する大きな要因です。PMIの初期段階で、両社の文化やビジョンの違いを理解し、統合に向けた施策を進めることが不可欠です。

  • コミュニケーションの強化:経営陣から従業員まで、透明で頻繁なコミュニケーションを行い、疑問や不安を解消。
  • 文化統合の取り組み:ワークショップやリーダーシッププログラムを通じて、双方の企業文化を尊重しつつ、統一感のある新しい文化を形成する。

3. 経営層の明確なリーダーシップ

経営層が統合プロセスを積極的に推進し、リーダーシップを発揮することが必要です。シナジー効果が出ない場合は、経営層が統合の進行を見直し、必要な修正を加えるリーダーシップが求められます。

  • 一貫性のあるリーダーシップ:トップマネジメントが統合計画を一貫して推進し、シナジー達成に向けて行動する。
  • 現場のリーダー育成:統合に際して現場レベルでもリーダーを育成し、現場での問題解決を促進する。

4. 優先事項の明確化とリソースの適切な配分

PMIの進行には多くのリソースが必要ですが、すべてを同時に行おうとするとシナジー効果が遅れることがあります。優先事項を明確にし、リソースを適切に配分することが重要です。

  • コア事業に集中:統合の最初の段階では、特にシナジーが期待される部門やプロジェクトに集中する。
  • リソースの再配分:人材、資金、時間を最も効果が出る分野に投入し、効率的に統合を進める。

5. シナジー効果のモニタリングとフィードバック

定期的にシナジー効果をモニタリングし、必要に応じて戦略やプロセスを調整することも重要です。効果が出ない原因を分析し、柔軟に対応することで、統合プロセスを最適化します。

  • KPIの設定:シナジー効果を測定するためのKPIを設定し、定期的に進捗を評価。
  • 柔軟な対応:シナジーが期待どおりに現れない場合、原因を分析し、統合戦略を見直す。

6. 技術やシステムの統合

両社のITシステムや業務プロセスが統合されていない場合、シナジー効果を阻害する要因になります。迅速に技術やシステムの統合を進めることが、効率向上やコスト削減に直結します。

  • ITインフラの統合:システムの互換性やデータ統合を早期に進め、スムーズな業務運営をサポート。
  • プロセスの標準化:統合企業全体で同じプロセスやツールを導入し、業務の一貫性と効率を向上させる。

7. 人材の統合とモチベーション向上

人材の統合や再配置を適切に進め、従業員のモチベーションを維持・向上させることも、シナジー効果を早期に発揮するための重要な要素です。

  • 優秀な人材の確保:統合後も優秀な人材が会社を離れることがないよう、適切なインセンティブやキャリアパスを提供。
  • モチベーション管理:従業員の不安を軽減し、シナジーに貢献できる意欲を高めるための施策を講じる。

以上の戦略を実施することで、シナジー効果を早期に実現し、PMIプロセスを成功に導くことが可能となります。


【8:自分でもできるM&Aの評価方法】

1. 事業価値の評価手法

M&Aの際に企業価値を評価するための代表的な手法として、次の3つがあります。

1-1. DCF法(ディスカウント・キャッシュ・フロー法)

DCF法は、将来得られるキャッシュフローを現在価値に割り引いて企業価値を算出する方法です。この方法では、企業が将来どれだけのキャッシュを生み出せるかを予測し、その将来のキャッシュフローを現在の価値に換算します。小企業においても、将来的な収益性を見積もるためにDCF法はよく用いられます。

手順:

  • 将来のキャッシュフローを予測する。
  • 割引率を設定し、予測キャッシュフローを現在価値に割り引く。
  • 事業価値に加え、余剰現金や非事業資産を加算し、企業全体の価値を算出する。

この手法は、長期的な収益予測が可能である企業に適していますが、成長が不透明な場合や、安定したキャッシュフローを生み出せない小企業には適用が難しいこともあります。

1-2. 類似企業比較法(マルチプル法)

類似企業比較法は、同じ業界や市場で類似の企業を比較し、その企業の評価倍率(マルチプル)を基に自社の企業価値を算出する方法です。売上高や利益に対して市場がどのような倍率をつけて評価しているかを参考にし、それを自社に当てはめます。小企業のM&Aでも比較的使いやすい方法です。

手順:

  • 業界内の類似企業や過去の取引事例を調査し、売上高や営業利益、EBITDA(税引前利益、利払い、減価償却費)などの指標に対するマルチプル(倍率)を算出する。
  • 自社の売上や利益にそのマルチプルを適用して企業価値を算出する。

この方法は、市場での取引データが豊富な場合に有効ですが、業界における類似企業のデータが少ない場合や、特殊な事業を展開している場合には適用が難しいことがあります。

1-3. 純資産価値法

純資産価値法は、企業が保有する純資産(総資産から負債を差し引いたもの)を基に企業価値を算出する方法です。この方法は、特に小規模な企業や安定的に資産を持つ企業に対して適用されます。固定資産の評価が重要な場合や、企業が資産集約型の事業(不動産や製造業など)を行っている場合に有効です。

手順:

  • 自社の資産と負債を評価する。
  • 総資産から総負債を引き、純資産を算出する。
  • 必要に応じて、資産の時価評価を行い、最終的な純資産額を確定する。

この方法は、主に資産価値が大きい企業や、利益よりも資産保有が重視される場合に適用されますが、成長性や将来性を評価することが難しいため、将来の収益を見込みたい場合には不十分です。

2. 非財務的要素の評価

小企業のM&Aにおいては、財務指標だけでなく、非財務的な要素も大きな評価対象となります。特に以下の要素が重要視されることがあります。

2-1. 顧客ベースの評価

小企業の価値は、顧客基盤の質と規模に大きく依存します。安定した顧客を持ち、長期的な契約がある場合、その企業は買い手にとって魅力的です。また、顧客のロイヤルティやリピート率、地域的な市場シェアも重要な評価ポイントです。

評価方法:

  • 顧客リストの分析(継続取引のある顧客の割合、リピート率、LTV(顧客生涯価値)など)。
  • 顧客との長期契約の有無、契約条件。
  • 顧客の離反リスクを評価し、収益への影響を考慮する。

2-2. 経営者のスキル・従業員の質

小規模企業では、経営者や主要な従業員のスキルや知識が企業価値に大きく影響します。特に、経営者が事業の核となる場合、経営者の退職後に事業がどのように維持されるかが評価のポイントになります。また、従業員のスキルやエンゲージメントも企業の競争力に直結するため、これも重要な要素です。

評価方法:

  • 経営者の後継者計画の有無や、その質を評価する。
  • 従業員のスキルセットや資格、業界経験の評価。
  • 従業員の離職率やモチベーション、企業文化への適合性も考慮する。

2-3. 知的財産・技術力

特に技術ベースの企業や、特許、ブランド、ノウハウを保有している企業では、これらの無形資産が企業価値に大きな影響を与えます。これらの無形資産は、競争優位を維持するための重要な要素です。

評価方法:

  • 特許や商標の数とその保護範囲を評価する。
  • 独自のノウハウや技術力が競合に対して優位性を持っているかどうかを評価する。
  • 製品やサービスのブランド力、市場での評判も重要な評価ポイントです。

3. 経営環境と市場の成長性

自社が属する業界や市場環境も、M&Aの際には重要な評価基準となります。市場の成長性や競争環境が、自社の将来価値を大きく左右します。

3-1. 市場の成長性

成長が見込まれる市場に属している場合、企業の価値は将来的に上昇する可能性が高くなります。逆に、成熟した市場や縮小傾向にある市場に依存している場合、企業価値が制限される可能性があります。

評価方法:

  • 市場調査データや業界レポートを参照し、今後の市場成長性を予測する。
  • 業界トレンドや技術革新、規制変更が企業に与える影響を評価する。

3-2. 競争環境

自社が競争優位にあるかどうかも、M&Aにおいて重要な評価ポイントです。競合他社との市場シェアや製品・サービスの差別化がどれだけできているかが、買い手にとって大きな関心事となります。

評価方法:

  • 自社の競争ポジションを把握するために、競合他社分析を行う。
  • 差別化戦略や競争優位性の持続可能性を評価する。

 

小規模企業のM&Aにおいては、「純資産法」が一般的な評価方法となります。この方法では、まず3期分の決算書を準備し、貸借対照表に記載されている純資産額(資本の部の金額)を基礎として評価を行います。具体的には、過去3期分の純資産額に、それぞれの期の経常利益を加算し、これがM&Aにおける大まかな評価額となります。

4. 最終的なM&A価格の決定

最終的なM&A価格は、上記の財務評価に加え、売り手と買い手の交渉によって決定されます。評価手法の選択や非財務的要素(顧客基盤、従業員のスキル、将来の成長性など)を考慮することで、企業の価値は変動するため、この交渉プロセスは極めて重要です。特に、買い手にとって「妥当」と思われる評価額を提示することが、M&Aの成功において大きなポイントとなります。 


【NO7:親族に株式を承継する方法はどんなものがあるの?

親族に株式を譲渡する方法としては、主に「相続」「贈与」「売買」の3つの手段があります。それぞれに特徴や税制上の扱いが異なりますので、詳しく見ていきましょう。

1. 相続による株式譲渡

相続は、株式の保有者が死亡した際に、その株式を遺産として家族に引き継ぐ方法です。相続の場合、以下の特徴があります。

特徴:

  • 税制: 相続税が課される。相続税の課税額は、株式の評価額や他の財産との合計で決定される。基礎控除や配偶者控除など、一定の条件で控除が適用されるため、相続税の負担は軽減される場合がある。
  • 評価額: 株式の評価額は、相続発生日の時価によって決定される。上場株式の場合は、その時点の市場価格が基準となる。非上場株式の場合は、類似業種の株価や純資産価額を基に算出される。
  • タイミング: 相続は被相続人が死亡した時点で発生し、遺産分割協議を通じて株式を誰が受け継ぐか決定する。

メリット:

  • 税金の支払いが遅延可能: 相続税の申告と納付は、相続発生後10ヶ月以内とされており、贈与に比べて税金の支払いまでの猶予がある。

デメリット:

  • 相続税の負担: 大量の株式や高額な株式を保有している場合、相続税が高額になる可能性がある。

2. 贈与による株式譲渡

贈与は、生前に株式を無償で家族に譲り渡す方法です。贈与にはいくつかの税制上の特徴があります。

特徴:

  • 税制: 贈与税が課される。贈与税は相続税に比べて高い税率が適用されるが、贈与税にも年間110万円の基礎控除がある。また、相続時精算課税制度を活用することで、2,500万円までの贈与について税金を繰り延べることができる。
  • 評価額: 贈与の際も株式の評価額は、その時点の時価を基に計算される。上場株式は市場価格を基準に、非上場株式は適切な評価方法で決定される。

メリット:

  • 財産の移転が計画的に行える: 生前に少しずつ株式を贈与することで、相続発生時の税負担を軽減することが可能。
  • 贈与税の基礎控除: 毎年110万円までの贈与であれば、贈与税がかからない。

デメリット:

  • 贈与税の高負担: 相続税よりも高い税率が適用されるため、多額の株式を一度に贈与すると税負担が大きくなる可能性がある。
  • 繰り返しの手続きが必要: 少額ずつ贈与を行う場合、毎年の贈与契約書作成や申告が必要になる。

3. 売買による株式譲渡

売買は、株式を家族に有償で譲り渡す方法です。通常の株式売買と同様に、対価を支払って株式を移転することができます。

特徴:

  • 税制: 株式を売却した際の売却益に対して、譲渡所得税(約20%)が課される。また、家族間での売買は、適正な価格で行われていない場合、「みなし贈与」として贈与税が課される可能性があるため、慎重な価格設定が必要。
  • 評価額: 売買価格は原則として市場価格や公正な評価額に基づいて決定されるべきであり、そうでない場合は税務上の問題が生じる可能性がある。

メリット:

  • 資産の現金化: 売買により、株式を現金化することができるため、他の資産運用や資金需要に応じた対応が可能。
  • 税金面の柔軟性: 売却益に対する譲渡所得税は、贈与税や相続税に比べて低い場合がある。

デメリット:

  • みなし贈与のリスク: 家族間で市場価格よりも低い価格で売買した場合、税務当局から贈与とみなされることがあるため、適切な価格設定が重要。
  • 現金の支払い: 家族間でも売買である以上、実際に現金を支払う必要がある。

結論

  • 相続は、亡くなった後の自然な株式の譲渡であり、相続税がかかりますが、計画的に資産を管理することで税負担を軽減することができます。
  • 贈与は、生前に計画的に株式を譲渡する方法であり、贈与税の非課税枠を利用することで、相続時の税負担を軽減できます。
  • 売買は、家族間で公正な価格で株式を取引する方法で、税金の面では譲渡所得税が発生しますが、贈与や相続よりもシンプルな手続きで進めることが可能です。

それぞれの方法には異なる税制や手続きの注意点があるため、具体的な状況に応じて適切な方法を選択し、税理士に相談することが大事です。

弊社のグループ会社である税理士法人 税理士法人スマッシュ経営(HP←クリック)は相続税の申告を年間300件行っており、経験も豊富ですので、事業承継の窓口はSBCが行っていますので、一度弊社までご連絡いただければと存じます。

NO.6: 商店のようなミニマムな企業におすすめのサイト】

日本政策金融公庫(旧称:国民生活金融公庫)が提供しているM&A支援」(←クリック)は、中小企業や個人事業主を対象としたサービスです。掲載するだけであれば無料で、専門スタッフが相談に乗ってくれるため、M&Aを検討している企業にとって有益なサポートを受けることができます。

日本政策金融公庫(JFC)の「M&A支援」サイトは、特に後継者不足や事業承継の課題に直面している中小企業が、M&Aを活用して事業を継続できるようにサポートを提供しています。政府系金融機関として、JFCは中小企業に対する資金供給や、事業承継を含む幅広いサポートを行っています。

サイトの目的

M&A支援」のサイトは、主に中小企業が事業承継を円滑に進めるための情報とサポートを提供しています。M&Aを通じて、事業を他の経営者に引き継ぎ、企業の存続を支援することが目的です。

主な支援内容

  1. M&Aに関する情報提供
    • 事業承継やM&Aの基礎知識、プロセス、成功事例などを提供し、経営者がM&Aを検討する際の参考になります。
  2. 専門家との連携
    • 日本政策金融公庫は、M&Aの専門家やコンサルタントと提携しており、企業がM&Aを進める際に適切なアドバイスやサポートを受けることができます。
  3. 資金調達の支援
    • M&Aを実施するための資金調達に関する情報や、公庫からの融資についての案内があります。特に中小企業がM&Aにかかる費用負担を軽減できるような融資制度も提供されています。
  4. 事業承継計画のサポート
    • 事業承継計画の策定や、M&Aを通じた事業継続の成功に向けたサポートが受けられます。

なぜM&A支援が重要か

日本では少子高齢化に伴い、中小企業の後継者不足が深刻な問題となっています。そのため、M&Aを通じて企業を他の経営者や企業に引き継ぐことが、企業の存続や地域経済の発展にとって重要な手段となっています。日本政策金融公庫の「M&A支援」サイトは、こうした背景の中で中小企業の事業承継を支援することを目的としています。

サイトの利用方法

このサイトを利用することで、事業承継やM&Aに関心のある経営者は、必要な情報や専門家のアドバイスを得ることができ、スムーズにM&Aプロセスを進められます。無料で利用できる資料やセミナー情報もあり、初めてM&Aを検討する経営者にとっても役立つリソースが揃っています。全国にあります日本政策公庫の窓口に問合せください。

注意点

このサイトは、国が運営するM&Aマッチングサービスを提供しています。掲載は無料ですが、仲介会社のように全てを代行するわけではありません。M&A相手と出会った後は、自身で契約書や書類の作成を行う必要があります。もし書類の作成方法がわからない場合は、SBCにご相談ください。相談は無料で、書類作成については50,000円から対応いたします。


【NO5:M&Aで事業承継が決まったらどうすればいいの?】

 M&Aによる事業承継が決まったら、まずはM&Aをどこに依頼するかを決定する必要があります。依頼先としては、M&A仲介会社、ファイナンシャルアドバイザー(FA)、またはブティックファーム(小規模なM&Aアドバイザリー会社)などが挙げられます。ブティックファームを利用する場合は、株式譲渡契約書の作成が出来ない場合も考慮して適切な依頼先を選ぶことが重要です。

有名なM&A仲介会社としては、日本M&Aセンター、M&Aキャピタルパートナーズ、ストライク、M&A総合研究所、fundbookなどがあります。報酬の相場は最低1,000万円程度からで、各企業により計算方法が異なります。詳細を知りたい場合は、SBCまでお気軽にお問い合わせください。ご相談は無料です。

 仲介手数料が高いと感じる場合や、企業の規模に適していないと考える場合には、M&Aマッチングサイトの利用も検討できます。代表的なサイトとしては、TRANBIBATONZM&Aナビなどがあります。

では、M&A仲介会社とM&Aマッチングサイトの違いを見ていきましょう。


1. サービスの内容

  ·  M&A仲介会社 

  • フルサポート: M&A仲介会社は、買い手や売り手の探索から、交渉、契約書作成、デューデリジェンス、クロージングまで、すべてのプロセスをサポートします。特に経験の少ない経営者には安心感があります。
  • 交渉力専門家が交渉に参加し、より有利な条件で取引を進められるよう支援します。

  ·  M&Aマッチングサイト

  • 自己管理型マッチングサイトは、買い手と売り手が直接交渉できるプラットフォームです。交渉や契約に関しては自社で進める必要があり、外部の専門家を雇うことも必要です。
  • コスト削減仲介手数料が抑えられるため、低コストでサービスを利用できる点が魅力です。


2. 費用

  ·  M&A仲介会社

  •  手数料が高い報酬は一般的に成功報酬型で、売却金額の5%10%が相場です。案件の複雑さにより、手数料がさらに高くなることもあります。

  ·  M&Aマッチングサイト

  •  コストが低い多くの場合、月額料金や掲載料を支払う形で利用できます。成功報酬型のサイトもありますが、仲介会社より手数料は低めです。


3. サポートの範囲

  ·   M&A仲介会社

  •   総合サポート売買先の探索から契約交渉、デューデリジェンスまでをサポートします。M&Aに不慣れな経営者にとって頼りになります。

   ·    M&Aマッチングサイト

  •  自己責任型マッチング後の手続きは自社で進める必要があります。外部専門家のサポートが必要な場合は、自ら手配する必要があります。


4. 時間と労力

   ·    M&A仲介会社

  •  効率的な進行会社側がプロセスを管理するため、経営者は通常業務をしながらM&Aを進められます。交渉やデューデリジェンスなどの負担が軽減されます。

   ·    M&Aマッチングサイト

  •     自己管理が必要すべてのステップを自分で進めるため、時間と労力が必要です。特に初めてのM&Aでは負担が大きいかもしれません。


5. 交渉の難易度

   ·    M&A仲介会社

  •  高い交渉力豊富な経験とネットワークを活かして、交渉を有利に進めることができます。

   ·    M&Aマッチングサイト

  •   自己交渉企業間で直接交渉するため、交渉力が不足している場合、条件を引き出すのが難しいことがあります。


6. 機密保持

   ·       M&A仲介会社

  •   高い機密性厳格な機密保持契約のもと、取引情報の漏洩リスクが最小限に抑えられます。

   ·       M&Aマッチングサイト

  •   低い機密性多くのユーザーがサイトを閲覧できるため、情報漏洩のリスクが仲介会社より高くなる可能性があります。


SBCでは、M&Aマッチングサイトを活用し、買い手探索からクロージングまでをしています。ご興味のある方は無料ですので、是非SBCまでお問い合わせください。

 

【NO4:事業承継で従業員に引き継ぐとしたら

ご家族とお話をされた結果、従業員が引き継ぐことを選ばれた方は、まず借金や株を引き継ぐことができるかなど、検討が必要となります。それ以外にも会社ごとの問題もあると思いますので、まずはSBCのような専門家に1度相談してみてください。

1. 借金の引き継ぎに関する問題点

  • 借金の責任会社に負債がある場合、その責任を誰が引き継ぐかが大きな問題となります。従業員が会社を引き継ぐ際、その負債をどう処理するかが重要な課題です。従業員が借金を引き継ぐことになると、彼らに過度の負担がかかる可能性があります。
  • 借金の再構築事業承継の過程で、既存の借金を再構築することが必要になる場合があります。銀行やその他の金融機関との交渉が必要で、従業員が新たな負債条件を受け入れられるかが鍵となります。
  • 個人保証の問題現オーナーが個人保証をしている場合、事業承継後もその保証が継続するのか、あるいは従業員が新たに保証人となるのかを明確にする必要があります。従業員に個人保証の責任を引き受けさせることは、リスクが大きいため慎重な判断が求められます。

2. 自社株式に関する問題点

  • 株式の評価と売却会社の株式を従業員に譲渡する際、株式の評価が大きな問題になります。公正な価格で売却するために、専門家による企業価値評価が必要です。また、従業員がその株式を購入するための資金をどのように調達するかも重要な課題です。
  • 支払い方法の検討従業員に株式を売却する際、現金一括払いが難しい場合、分割払いのオプションも検討されます。この場合、支払いが長期間にわたるため、オーナーとしてのリスクや支払いの確実性についても考慮する必要があります。
  • 株式の分散複数の従業員に株式を分散して譲渡する場合、経営権が分散し、意思決定が難しくなる可能性があります。このため、株式をどのように分配するか、または従業員持株会を設立するかなどの選択肢を検討する必要があります。

3. 経営権の移行に関する問題点

  • 経営ノウハウの継承従業員が新たに経営を担う場合、オーナーからの経営ノウハウの継承が重要です。これには、事業運営の戦略、取引先との関係、業界特有の知識などが含まれます。適切な引き継ぎが行われないと、事業運営に支障をきたす可能性があります。
  • 経営体制の整備新たに経営を引き継ぐ従業員が、リーダーシップを発揮できる体制を整える必要があります。特に、複数の従業員が経営に参加する場合、役割分担や意思決定のプロセスを明確にすることが求められます。
  • 従業員のモチベーション維持従業員が経営者として新たな責任を負うことになるため、モチベーションの維持が課題となります。適切なインセンティブ制度やサポート体制を導入することが、成功の鍵となります。

4. 税務・法務に関する問題点

  • 税務リスク事業承継に伴う株式の譲渡や借金の処理には、税務上のリスクが伴います。特に、譲渡所得税や贈与税が発生する可能性があるため、税理士と連携して適切な対応を取る必要があります。
  • 法的手続き株式の譲渡や借金の再構築には、法的手続きが伴います。これらの手続きをスムーズに進めるために、弁護士の助言を受けることが重要です。

これらの問題点に対処するためには、事前の計画と専門家のサポートが不可欠です。従業員に事業を承継する際には、経営者としての責任やリスクを明確にし、スムーズな移行を目指すことが重要です。

【NO3:家族に相談したら次はどうする? 

  事業承継を考える人が家族に相談した後に取るべきステップは、事業の将来を見据えて計画的に進めるために非常に重要です。まずは以下に親族内承継における、その主要なステップを紹介します。後に従業員への承継(MBO)、第三者承継(M&A)を順次説明していきます。

1. 事業承継計画の策定

家族との相談後、まずは事業承継計画を具体的に策定することが重要です。これには、誰が後継者になるかの選定、事業の現在の状況分析、将来の目標設定、承継に必要な手続きやスケジュールの策定などが含まれます。専門家(税理士、弁護士、コンサルタント)を交えて計画を策定することが望ましいでしょう。

2. 後継者の育成

選定した後継者がスムーズに事業を引き継げるように、適切な教育やトレーニングを提供する必要があります。これには、現場での経験を積むことや、必要な知識やスキルを学ぶことが含まれます。また、外部のビジネススクールや研修プログラムを活用することも有効です。

3. 事業の財務・法務面の整理

事業承継には、財務や法務の整理が欠かせません。まず、事業の財務状況を正確に把握し、必要な場合は財務改善策を講じます。また、事業承継に伴う税金や法的手続きについても理解し、適切な対策を講じることが重要です。遺産分割や株式の譲渡に関連する問題を回避するためにも、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。

4. 従業員や取引先とのコミュニケーション

事業承継は従業員や取引先に大きな影響を与えるため、これらのステークホルダーとのコミュニケーションを怠らないようにしましょう。後継者が決定したら、その意向やビジョンを共有し、信頼関係を築くことが重要です。また、従業員の不安を軽減し、取引先の協力を得るためにも、透明性のある情報提供が求められます。

5. 事業承継の実行とモニタリング

計画が整ったら、実際に事業承継を進めます。この過程では、計画に基づいてスケジュールを管理し、必要に応じて調整を行います。承継後も事業の進捗をモニタリングし、後継者が順調に業務を遂行できているかを確認します。問題が発生した場合は、迅速に対応し、改善策を講じることが求められます。

6. 退任後の役割の明確化

事業承継が完了した後も、前経営者として何らかの役割を担うことが多いです。しかし、その役割は明確に定め、後継者の権限を尊重することが重要です。相談役や顧問として、後継者の支援を行う一方で、経営への介入を控え、後継者が自立して事業を運営できる環境を整えます。

以上のステップを踏むことで、事業承継が円滑に進み、次世代へと事業が継続していくことが期待されます。

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【NO2:事業承継を考えるとき、まず何をすればいいの


事業承継の準備を始めるにあたり、まず重要なのは、家族との話し合いです。会社の将来を真剣に考える中で、経営者が最初に行うべきことは、「将来についてできるだけ早く家族と話し合う」ことです。これは顧問税理士や公認会計士、取引のある金融機関など第三者への相談よりも優先すべき事項です。驚くことに、「子どもが事業を継ぎたいのか、継ぎたくないのか」という基本的な意識確認や、「親として継がせたいのか、継がせたくないのか」という整理ができていない経営者は少なくありません。

事業承継を早めに検討し、準備を進めることには多くのメリットがあります。後継者が決まった場合、十分な引き継ぎ期間を確保でき、会社や経営者自身の資産や負債を整理し、円滑に事業を引き継ぐことが可能です。また、中小企業では、家族や親族が役員や株主であることが多く、関係者全員から「事業の行く末」や「新しい経営者」について十分に理解を得る時間を確保することができます。さらに、株の譲渡に伴う税金や退職金など、経営者の余生に直結する資産についても事前に専門家と話し合うことで、最適な選択が可能となります。

事業承継の準備を始めるのに「早すぎる」ということはありません。多くの経営者が事業承継を考え始めるのは50代、60代になってからですが、中には70代、80代になってからという方もいます。中小企業庁の調査によれば、1995年から2015年にかけて、経営者の平均引退年齢は中規模企業で67.7歳、小規模事業者では70.5歳と、高齢化が進んでいます。

事業承継を考える際には、単に事業の引継ぎだけでなく、「人生100年時代」における引退後のライフプランも考慮する必要があります。経営者としての責任が増す中で、親の介護、子どもの進学・結婚、自身や配偶者の老後、財産の相続など、年齢とともに考えなければならない問題が増えていきます。そのため、50代でも事業からの引退を考えるのは「早い」とは言えません。人生設計を早めに考えることで、後悔のない選択ができるのです。

事業の引継ぎには、少なくとも3年以上かかるとされています。経営者が事業を引き継ぐ相手として、主に3つの選択肢があります。親族(妻や子ども、孫など)に社長の地位を譲る、専務など社内の人間を社長にする、第三者に事業を譲渡(売却)する、という選択肢です。

特にのように、親族ではないが実力のある社員に任せたいと考える経営者も多いですが、非上場企業ではいくつかのハードルがあります。まず、連帯保証が問題となり、社員が経営者になったときに借入金の連帯保証ができるかどうかが重要です。次に、株式の買い取り問題があります。社員が株式を買い取らないと、経営責任が前社長のままである可能性があるからです。また、引き継ぐ相手が高齢であれば、再び承継問題が発生するリスクも考えなければなりません。これらの課題がクリアされない限り、承継は実現しません。

親族に経営者としての資質があり、事業を承継できるのであれば理想的ですが、新社長を510年程度はフォローする必要があります。経営者が長年培ってきた技術や知識、人脈などは一朝一夕で伝えられるものではなく、事業が安定するまで新社長を支え続けることが求められます。

また、第三者に事業を譲渡する場合でも、M&Aの準備から相手探し、面談や交渉を経て成約、新体制への引継ぎ完了まで3年程度かかることが一般的です。さらに、M&A後も事業が安定するまで社長を続けるよう求められるケースもあります。どの選択肢を選んでも、社長個人の資産管理や相続についても考える必要があります。

これらの理由から、早期に家族と将来について話し合い、会社の現状を把握し、経営者としての人生を総仕上げすることが重要です。家族の同意を得たうえで、専門家と共に事業承継を計画し、リスクや重点ポイントを考慮しながら進めることが、成功への道です。

まずは、会社に親族がいる、もしくは株主にいるのであれば、最初に相談すべきでしょう。どんな内容を話せばいいかわからないというかたは、SBCにお声がけください。話す内容等相談にのりますので、お気軽にお問い合わせください。

【NO1:会社を相続することと事業承継との違いとは?】

会社の相続とは、主にオーナー経営者が所有する「株式」を相続することを指します。オーナー経営者は会社の重要な意思決定に大きな影響を与える権限を持っているため、株式を相続することは単に財産を受け継ぐだけでなく、会社の経営や方向性に対する責任も受け継ぐことになります。この株式の相続は、会社の存続や発展に直接関わる重要な問題であり、相続人が株式をどのように取り扱うかによって会社の未来が左右される可能性があります。

株式相続の基本的な考え方

会社の株式を相続することで、相続人は株主としての権利を引き継ぎ、会社の重要事項に関する意思決定に関与することができます。例えば、株主総会における議決権や、配当金の受け取り権、さらには取締役の選任や解任といった経営に関わる重要な決定に関与することが可能です。しかし、これには当然ながら責任も伴い、特に未上場企業では株式の価値が会社の業績や経営状況に直接影響されるため、相続に際しては慎重な判断が求められます。

相続人が会社を継がない場合

相続が発生した場合、相続人が必ずしも会社を継ぐ意思を持っているとは限りません。特に家族経営の会社では、後継者の意思や能力が問題となることが多く、相続人が経営に興味がない、あるいは経営能力が不足している場合も考えられます。その際には、次のような選択肢が考えられます。

  1. 他者に取締役を任せる相続人が株式を保有しながらも経営を行わず、外部の専門家や信頼できる人物を取締役として任命する方法です。この場合、経営は外部に委ねられますが、相続人は引き続き株主としての権利を持ち続けます。
  2. M&Aで株式を売却する会社の株式を外部の企業や投資家に売却し、現金化する方法です。この方法では、相続人は会社の経営から完全に離れることになりますが、資産としての株式の価値を他の形で活用することができます。M&Aによって会社の経営権が外部に移るため、従業員や取引先、顧客への影響を十分に考慮する必要があります。

事業承継と会社の相続の違い

事業承継と会社の相続は、混同されやすい概念ですが、その本質は異なります。事業承継は、経営者が存命中に自らの意思で後継者に事業を引き継ぐことを指します。これには、後継者の選定、育成、そして事業や経営ノウハウの伝達が含まれます。事業承継は計画的に行われるため、事前にさまざまな準備が可能であり、会社の存続や発展を確実にするための重要なプロセスです。

一方、会社の相続は経営者の意思とは無関係に発生します。相続は経営者の死後に起こるため、予期せぬ形で株式が相続人に渡ることになり、事前の準備が不足している場合には会社の経営に混乱を招く可能性があります。特に、中小企業や家族経営の企業においては、このような突発的な相続が大きな問題となることが多く、適切な相続対策が重要となります。

法人と個人事業の相続の違い

会社の相続には、「法人」と「個人事業」の相続が存在します。法人の場合、経営者が所有する株式を相続することが主な内容です。株式の相続によって、相続人は株主としての権利を引き継ぎますが、経営に関与するかどうかは別の問題です。場合によっては、株主として配当金を受け取るだけで、経営には直接関与しない選択肢もあります。

一方、個人事業の場合、相続の対象となるのは事業に関連する資産や負債そのものです。これには、事業に使用している土地や建物、設備、さらには事業に関連する債務などが含まれます。個人事業の相続では、相続人がこれらの資産と負債を直接引き継ぎ、事業を続けるかどうかを決定することになります。

会社の相続における注意点

会社の相続にはいくつかの注意点があります。まず、株式の分散による経営権の掌握が困難になる可能性です。複数の相続人が株式を分け合うことで、株主間での意見の不一致が生じ、経営判断がスムーズに行われなくなるリスクがあります。これを防ぐためには、株式の集中を図るか、相続人間での協議を十分に行う必要があります。

次に、借入金の相続リスクです。会社が抱えている借入金がある場合、それも相続の対象となります。相続人がこれを引き継ぐかどうかを判断する際には、会社の財務状況を十分に把握し、リスクを最小限に抑えるための対策を検討することが求められます。

さらに、親族間のトラブルも無視できません。相続を巡って親族間で争いが起こることは珍しくなく、これが会社の経営に悪影響を及ぼすことがあります。こうしたトラブルを未然に防ぐためには、遺言書の作成や生前贈与、家族信託などの対策が有効です。特に、遺言書を作成することで、相続人間での意見の対立を避け、円滑な相続を実現することができます。

事業承継と相続対策の重要性

会社の相続を円滑に行うためには、事業承継も合わせて検討することが推奨されます。事業承継は経営者が元気なうちに計画的に進めることができるため、後継者の育成や事業の引き継ぎに時間をかけることができます。これにより、相続が発生した際に経営が混乱することを防ぎ、会社の継続的な成長を確保することができます。

また、税務上の対策も重要です。相続税の負担が大きい場合、会社の財務状況に悪影響を与える可能性があります。適切な税務対策を行うことで、相続税の負担を軽減し、相続後も会社が健全に運営できるようにすることが求められます。

具体的には、生前贈与や家族信託を活用することで、相続税の負担を分散させることが可能です。生前贈与は、経営者が存命中に株式の一部を後継者に贈与する方法であり、家族信託は信託契約を通じて資産を管理しながら、相続発生時の混乱を防ぐ手段です。

結論

会社の相続は、単なる財産の引き継ぎではなく、会社の経営権や将来をも左右する重要な問題です。適切な相続対策を講じることで、相続がスムーズに行われ、会社の存続と発展を確保することができます。また、事業承継も合わせて検討することで、後継者が安心して会社を引き継ぎ、さらなる成長を目指すことが可能となります。相続や事業承継に関する専門家のアドバイスを受けながら、早めに対策を講じることが成功の鍵です。